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2011年の内戦勃発以降増大するシリア難民への対応は、今や国際社会の緊急課題となっています。こうした状況を踏まえ、難民研究フォーラム(RSF)では、7月9日に公開シンポジウム「増大する難民の受け入れニーズと実態~シリア難民を中心に~」を開催しました(後援:真如苑)。EU・北米・日本の難民受け入れ事情に詳しい専門家をお招きし、各国の現状の比較を通じて、今後の受け入れ政策の展望を検討しました。参加者は140名を超え、難民受け入れに対する関心の高さが伺えるものとなりました。
《第一部》「第4回若手難民研究者奨励賞」受賞式及び研究概要報告
公開研究会として、第4回若手難民研究者奨励賞受賞者の表彰と研究概要報告が行われました。
《第二部》公開シンポジウム
1.基調講演
ドイツにおける難民政策と国内での動き/久保山亮(専修大学兼任講師)
中東での情勢不安により、異なる民族・文化背景を持った難民が増加するドイツでの統合問題について取り上げ、職業訓練等による市場統合へ重点を置いたドイツの難民受け入れ政策が紹介されました。労働力としての難民の受け入れは、受入国側の利益にもなることが示唆され、一連の政策への期待が寄せられました。
2.各登壇者発表
EUの難民受け入れの展開と動向/八谷まち子(元九州大学法学研究院教授)
急激な難民の流入により、受け入れの管理・統制が取れずにいるEUでは、トルコとの協力体制強化、犯罪対策部との連携、非EU国との連携等で管理体制の立て直しを行うことが早急な課題として報告されました。
北米を中心としたシリア難民受入れ状況/石井宏明(難民支援協会常任理事、難民研究フォーラム話人)
トルコと北米への現地視察から、難民受け入れにおける民間団体の役割の重要性が指摘され、特にカナダの官民連携での受け入れ支援には大きな期待が寄せられました。同時に、難民条約に地理的制限を設けるトルコでは、一時的滞在許可証での受け入れや、食料・高等教育支援が行われていることが言及されました。
日本~シリア難民を中心とする難民の受入れの動向/難波満(シリア難民弁護団弁護士)
各国と比較して、日本での難民受け入れが極端に少ない点に関して、厳格な審査基準により認定数が少ないことや、地理的要因や定住支援の不足、言語・文化的な壁により、申請数自体が少ないことが説明されました。
3.パネルディスカッション
後半には、モデレーターとして藤本俊明神奈川大学講師が加わり、パネルディスカッションが行われました。参加者からは受け入れ国での難民の社会統合についての質問が多くあげられ、これに対して講演者からは、ドイツでは依然難民受け入れを支持する声が多いこと、北米・ドイツでは就労支援が充実しており、難民の在留国での自立に期待が持てる旨が報告されました。550万近いシリア人が難民状態となっている現状で、傍観者でいることの疑問も提示され、日本での民受け入れの展望についても、一歩ずつでも実践的に行動を起こしてゆく勇気を持つことの重要性が確認されました。